カウンセリング

復職後うつ病を再発した人へのカウンセリング

なぜ再発するのでしょう。
今、メンタルヘルスの分野で再発を繰り返す遷延性うつ病が問題になっています。うつ病は再発すると、一般的に病態が重くなり、また再発率が高まると言われています。働く人にとっては、遷延化したうつ病は、時に失職を意味し、その影響は重大です。

ではなぜ再発するのでしょう。

私の心理相談室でも、休職後の職場復帰でうつ病を再発した人がいらっしゃいます。精神科や心療内科での薬物療法、或いはそれにプラスしてカウンセリングを受けて鬱から回復して復職したものの、復職後、早い人は2・3ヶ月で鬱を再発するのです。そしてここにリファーされてくる、またはホームページを自分で見つけてこの相談室にやって来るのです。そのような人々のケアーの経験からすると、私は再発の原因を次のように考えます。

うつを再発する人々には、大抵の場合、うつ病を引き起こす要因となる考え方、心の癖(場合によってはその背後にある本人も気づいていない心理的な問題、つまり対人恐怖、トラウマ)があるにもかかわらず、最初の治療でそこに十分に焦点が当たっていない場合が多いのです。

薬は、このような心理的な要因は解決しません。またカウンセリングを受けていても、カウンセラーの技量が不足していれば、扱い方が不十分です。その結果、心理的な要因が解決されないままに、取り合えず休職による休息でうつ病から回復しますが、鬱病の原因となる心理的な問題がそのままなのです。すると復職して仕事の負荷を以前と同じように戻すと、前回と同じように心理的な問題が働き出し、同じような経緯と症状をたどり、再度、うつ病になります。しかも、二回目なので、以前より簡単に、短時間で再発し、病態はより重くなります。

ではどのようなカウンセリングで、うつの再発を防げるのでしょう。私の経験をまとめると次のようになります。

  1. うつを発病する(出社できなくなった)時の経緯を詳しく明らかにする。何が引き金になったのか(どんな言葉?)、その時の心理的な背景、また、自分を落ち込ませる思考、それが引き起こす感情、このような事をできるだけ具体的に明らかにする。そしてそこから心理的な問題を特定していく。この段階では、一般的な認知行動療法で言われている認知の歪みで記述されている内容よりも、もっと個別に特定する必要があります。また本人も気づいていない、自覚していない、無意識に封じている内容なので、単純な質問等では明らかになりません。カウンセリングの統合的な技法を使って、初めて特定できます。
  2. その心理的な問題の形成される由来を明らかにする。その心理的な問題は原因のない所からいきなり出来たものではありません。必ず原因があります。それも様々な原因が絡み合っています。それらを、その人の生育歴を具体的に聞きながら、丁寧に解き明かしていく必要があります。問題の出来上がった経緯を解明する段階で、トラウマ的な原因があれば、適宜トラウマワークを行う必要があります。
  3. 心理的な問題の原因の経緯・由来を具体的に明らかにすると、自然とある程度回復していきますが、さらに回復を確実なものにするために、認知や考え方も修正する必要があります。しかし、一般的な認知行動療法だけでは十分に修正できない場合も多く、その場合は感情処理、新世代の認知行動療法、ナラティブな扱い、ロールプレイ、イメージワークを使います。望ましい認知を体験を通して系統的に獲得していきく援助を行います。

鬱病の再発を繰り返す場合、1から3を通して扱う必要のある心理的な問題が複数あるケースが多いです。ですから1から3を螺旋的に繰り返します。更に、言語化が難しい場合にはアートを活用し、また夢は上記のどの段階でも、非常に有効に手がかりや解決のヒントを与えるので、クライエントが覚えている場合はクライエント中心の夢療法を行います。

このようにしてうつの再発を引き起こしていた心理的な問題を解決していくと、うつを再発した状況になっても、ちょっとした落ち込みはあってもうつ病自体の再発を防げるようになります。つまり、うつへの「耐性」が身に付きます。このうつへの「耐性」を得る事は、この相談室のカウンセリングにおける大事なポイントと考えます。

カウンセリングの回数と回復の目安はどのくらいなのでしょう。うつの重さと病歴の長さ、その人のセッションへの協力度、その人を取り巻く心理的社会環境により差がありますが、ある事例を基にまとめてみます。

1回−15回、1週間から2週間に1回の頻度:
とりあえず、うつからの回復が目標となります。つまり、鬱の症状が相当に軽減され、リハビリ出勤できる状態になる事です。

15回−40回、2週間から3週間に一回の頻度:
職場復帰後を支える段階です。復帰後ストレスレベルがあがるのを逆に利用して、そこからあぶり出される普段なら気づきにくい心理的な問題を扱っていきます。このプロセスがうつに対する耐性を高めます。この段階で一時的に心の調子を崩しても、カウンセリングの頻度を一時的に上げ、心理的な原因を集中的に扱って解決します。この経験が重要です、このプロセスを積み重ねれば、次第にうつへの耐性が身に付いていきます。同時に心理的な健康度が健常レベル以上になり、仕事の生産性がうつ病以前より増している時すらあります。

40回以降、一ヶ月から二ヶ月に一回の頻度:
この時期には、うつを発症する以前と同じレベル、またはそれ以上の心理的な健康状態になっている場合も多いです。うつ病から回復した後のフォローアップの意味あいが大きいですが、人によってはコーチング的な意味合いでカウンセリングをしばらく続ける人も多いです。

これはあくまでも鬱を再発し、ここにリファーされて来た事例の一つに過ぎないので、すべての鬱病の人がこの通りに回復する訳ではありません。回復の期間には幅があります。これより早く回復する人もいれば回復の遅い人もいます。また、鬱病だけでなく他の精神疾患も併発している場合は、当然、回復により時間が必要となります。

ところで、カウンセリングには健康保険が適用されないので、医療機関を受診する場合と比較して高いという声を耳にする事があります。単純に一回当たりの料金を比較すればそうなるかもしれません。しかし、鬱病は職を失うリスクと隣り合わせになりました。職を失い、その後も鬱病で普通に働けなければ、その損失は数千万のオーダーになります。このような状況で重要な事は、一回の費用よりも、本当に鬱から回復するのかどうかだと思います。30回から40回のカウンセリングの料金は数十万です。この金額と失職の経済的損失を比較すると、どうでしょう。本当に高いと言い切れるでしょうか。しかも、健康保険が適用される医療機関でも治療期間が長くなればトータルの出費は10万円以上になる事も珍しくありません。しかも薬物療法だけに頼っていても、遷延性鬱病の場合回復が思わしくない事が多いのです。

以上を考慮すれば、いいカウンセリングは高くはないと思います。むしろその人の就業人生が救われるとしたら、安いのではないでしょうか。

鬱の症状が専門家の治療を長期に受けているのに、病態があまり変化していないのであれば、その治療者の責任は大きいと私は考えます。セカンドオピニオンを求めるなり、他の専門家につながってみてはいかがでしょう。今の治療なり援助が鬱からの回復に役に立っているかを判断する事は、最終的にはその人自身が自己決定できる事柄です。そしてカウンセリングの場合、最初の数回でそのあたりの判断はつくものです。

うつ病でいたずらに長い期間苦しむ必要はありません。皆さんにあったカウンセラーと巡り会える事を心からお祈りすると同時に、是非、当相談室も試してみて下さい。

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