カウンセリング

ナラティブ・ジャーナリング・セラピー

ナラティブ・ジャーナリング・セラピーの基本的な考え方は、以下の通りです。

  1. 人が心に持つ感情、恐れ、不安、考え(以下、これらをターゲットと呼びます)等のすべてには、そうなる理由がある。
  2. すべての感情や考え方に愛と敬意を払って取り扱う。
  3. ターゲットの感情や考え方ができあがる経緯については、本人が一番よく知っている。
  4. 原因が十分に具体的に判れば、自然と変化が起こる。

人が心に持つ感情、恐れ、不安等のすべての気持ちには、そうなる理由があります。また、否定的な考えにしても、それを持つに至る経緯と理由があります。そのような考えや感情を心に抱くようになったのは、生まれてからのさまざまな原因の結果です。

ターゲットとなるネガティブな感情や考え方は、人によってはいけないことだと思い、必死になってそれと戦います。しかし、そうすればそうするほど逆に、その感情や考え方がますます強力になっていきます。そんな時、逆に、愛と敬意を持って大切に扱うのはどうでしょう。無視したり、打ち消そうとしないで、その部分に適切に焦点を当て、その部分に関してどのような情報が、まだ明らかになっていないのかを、好奇心とともに見いだしていくのです。このようなアプローチをナラティブ・ジャーナリング・セラピーは行います。

自分の人生について、1番よく知っているのは本人自身です。その親ではありません。またカウンセラーや医師等の専門家でもありません。言い換えれば、今、問題として扱うターゲットの感情や、考え方について、それが形成される経緯について一番よく知りうるのは、本人自身ということです。たとえ本人が忘れていても、その人の無意識には人生の生まれてからのすべてのできごとが記録されているといいます。この無意識の部分に適切にアクセスすれば、問題の本当の原因と、それが形成される経緯が、明らかになります。

それができるのは本人だけです。

本当の原因が十分に具体的なレベルで判れば、解決法のヒントは自然と見つかります。ここでいう具体的なレベルとは、母親から口うるさく干渉されたとか、親から心理的虐待されたという、抽象的な表現ではまだ不十分と考えます。口うるさく干渉されたというのであれば、どのようなシーンで具体的にどのような言葉と態度で干渉され、その時に本人自身はどのような言葉を発し、心の中でどのように感じていたのかを明らかにする事です。

更にそれが毎日続いたのか、それとも1カ月に一度ぐらいの頻度だったのか、ということも重要です。1回のできごとだけではなく、毎日が積み重なってクライエントがある世界観なり考え方や感情を持つようになったとするのであれば、それがどのようなものだったかを明らかにする必要があります。このように詳しい具体的なレベルで問題が形成される経緯を見いだしていけば、そこに本当の原因を見つけ、それは自然と問題を解決する方向性を教えてくれます。問題がこれまで解決してこなかったのは、往々にして、その問題の原因の探究が具体性という意味で十分でなく、抽象的なレベルにとどまっていたためです。特に、抽象的なレベルでの原因を得ても問題が解決してこなかった人は、これを考慮するといいでしょう。

やり方

ステップ1 誰でも、このような生い立ちと、人生を過ごせば、ターゲットとなる感情や考え方を持つに至る、というストーリー(人生)を作る。

このステップでクライエントは、ある架空の人を主人公にして、その人生をストーリーとして創造します。「ある架空の人を主人公にして」という所にポイントがあります。

なぜなら、人がネガティブな考え方や感情に適切に対処できない一つの大きな理由は、そのような考えや感情を持つ自分が恥ずかしかったり、または、そんな自分はダメだと自分を責めたり、罪の意識や劣等感を持つからです。このような意識は、自分の中の抵抗として、問題を深く探究する妨げとなります。それを防ぐ為に、「誰でもそのような人生を送れば、ターゲットの感情や考えを自然と持つようになる」という枠組みを考え、しかも、自分ではない架空の人を主人公にするのです。そうすることで、問題をよりあるがままで受け入れられます。するとより気楽に、リラックスして、かつ時には楽しみながらストーリーを作ることができねので、より深く問題を探求できます。

その際、主人公の性別や年齢、時代と国の設定も変えた方が、クライエントにとってよりそのストーリーを実感できることがあります。テーマによっては、舞台をインカ帝国に移した方がやりやすければ、そうします。このようにして、ある主人公が、生まれてからターゲットの考えや感情を持つに至るまでの人生を、クライエントが実感できるように一つのストーリーとして作り上げます。

以上の方法でストーリーを作ると、そのプロセス自体の中で何か小さなカタルシスが起き、またそれまで表現できなかったような深い気持を表現でき、癒しが起こる事もあります。更に、次に、できたストーリーを客観的に分析し、クライエント自身の生い立ちから今までの人生を重ね合わせる事で、クライエントのターゲットの考えや感情の本当の原因を知ることができます。この過程で、予期せぬ原因が見つかったりすると、それだけでも大きな気づきとなり、クライエントの心は回復します。

ここで作られるストーリーは、診断的であると同時に治癒的です。

ステップ2 できたストーリーを再創造する(書き換える)

できたストーリーを再創造し、書き換えるのが、2番目のステップです。主人公の人生の再創造です。

主人公は、ステップ1で出来たストーリーの人生を1回送りました。もしそこで経験した様々な事を客観的に振り返り、洞察を得て、2回目のチャンスを与えられたら、もっとずっと上手くやれると思いませんか。その可能性をシュミレーションするのが、このステップの狙いです。

様々な可能性がここでは存在します。例えば、ここまでの主人公の人生を振り返って、そこでの課題に気づき、それをこれからの人生の中で克服していく、というように書き換える方法。或いは、もう1回最初からステップ1の人生を送るが、途中で、何かを学んで気づき、一回目とは異なる行動を取るという事も考えられます。途中で異なる行動を取れば、その後の展開が異なり、その結果、まったく違う人生になりえます。多くの場合、よりよい人生になります。その結果、主人公も異なる考え方や感じ方をする人物になります。

クライエントが、自分自身に正直になり、ステップ1のストーリーを検討すると、必ずクライエントにとって何か新しい意味があり可能性のある人生をステップ2のストーリーで作り出すことが可能です。そしてその結果を、心の中で十分に味わい体験すると、深い癒しがクライエントに起こります。と同時に自分の今の人生に対しても、新しい洞察を得ます。それまで考えつかなかったような新しい希望を見出します。すると、ターゲットとした考え方や感情も、以前ほどの力がなくなり、人によっては全く手放すことができます。

ステップ2の部分は、このように洞察的であると同時に治癒的であり、建設的です。

ステップ1もステップ2も、ストーリーを作る時に、言葉で話しながら、同時にストーリーを書き留めます。人に聞いてもらうというカウンセリングの効果で心が軽くなると同時に、書くという作業により、適切なスピードで自分の無意識に触れ、しかもその記録を残せます。記録が残るので、あとで客観的な検討を加えることができます。このやり方も、ナラティブ・ジャーナリング・セラピーの特徴の一つです。

取り扱うテーマは、強迫的な考え、パニックを引き起こす不安や恐れ、ある状況で感じるネガティブな感情、不安、恐れ、トラウマ、心の囚われ、手放せない価値観等があります。

自分では説明のつかない心の動きでも、そこには何らかの原因があるものです。それを明らかにするのがナラティブ・ジャーナリング・セラピーの目標です。

効果

ナラティブ・ジャーナリング・セラピーを行う前には、ターゲットとなる感情や考え方に振り回されたり、自分では良くないと判っていてもどうにもできなかったというものが、和らいだり、コントロールできる範囲に収まります。つまり、普通のレベルになります。

例えば、誰かから酷く傷つけられ、その悲しみと怒りから抜け出せないでいた時、このナラティブセラピーを行うとどうなるでしょう。相手を本当の意味で赦し、その結果、心の平穏を取り戻す事が可能です。

強迫的な行動で悩まされている人は、どうでしょう。このセラピーにより、その行動に以前ほど悩まなくなったり、場合によっては、その強迫行動を忘れている自分に気づく事さえあります。

標準的なセッションの説明

  1. インテークセッション。このセッションでクライエントの症状、これまでの心理的な経緯を詳しくインタビューします。そして、ナラティブ・ジャーナリング・セラピーで扱うターゲットとなる感情や考え方を決めます。
  2. ステップ1。最初のストーリーを作る。
  3. ステップ2。ステップ1で書いたストーリーに考察を加え、それを再創造するという形で書き換える。
  4. フォローアップ。クライエントが3回のセッションを通じてどのように変化したかディスカッションし、必要があれば、更にセッションを続ける。

まとめ

ナラティブ・ジャーナリング・セラピーは、とても安全な手法です。しかし、クライエントの核になるような不安感を直接的に効果的に取り扱うことが可能なので、時としてその効果は大きく、驚きます。いちばんの長所は、クライエントがそれまでの人生の中で考えもつかなかった新しい可能性に気づくことです。これまであきらめていたり、人生とはこんなものだと思っていた事柄が、もっと良い方向に自分でも作り上げることが可能だ、と実感するのです。この意味で、単にネガティブな考えや感情を手放すというだけではなく、自分の将来をより自分らしく生きていく大きな生きる力を見いだします。心理的な癒しを超える気づきを得ることも可能です。

自分の人生を自分で作っていくというのは、あまりにも当たり前な事かもしれません。しかし、実感して行おうとすると、なかなか難しいものです。それをもう一度自分で再発見し、少しでも触れてみたいと思う人は、是非、ナラティブ・ジャーナリング・セラピーを体験してみて下さい。

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